夏サイダー
自分の小さいころの夏の飲み物といったらラムネよりサイダーだった。細めの250mlくらいの缶を飲んでいた記憶がある。当時の缶のプルタブは外れるタイプで、子供には少し開けるのが大変だったような気がする。
夏休みは長くて、でも1日はすぐに終わった。4畳半の和室を締め切ってまだ新しいエアコンを使って快適に過ごす。宿題は夏休みをすべて使うほどたくさんはなく、7月中には終わらせていた。NHKの子供向け番組をみたり、ゲームをしたりしていた。
外に出るといったらラジオ体操とプールくらいだった。ラジオ体操にはなぜか父親と行っていた。歩いて5分ほどのところにある神社で集まって行う。当時でも結構古く、雰囲気のある場所だった。木に囲まれたそこは日差しから僕たちを守ってくれていた。ただ蚊に刺されることが多く嫌だった。ハンコをもらってラジオ体操がおわる。
プールがある日は午前か午後に学校に向かう。ビーサンが歩きにくかったけどペタペタと歩いた。田舎なので日陰もなく、畑に囲まれたコンクリートは熱くなって蜃気楼も見えるほどだった。プールは少しぬるくて塩素の香りが鼻についた。水色に塗られたプールの塗装はところどころ剥げていた。動くことで激しく波打つ水はキラキラとしていてまぶしかった。
帰りはすごく違和感があった。カラダは冷えて涼しいのだけど暑くて、かなりの疲労感があって、何とも言えない感覚だった。家についてもだるくて、プールにすべての体力が溶け出していた。
そんな夏のある日、歳の離れた兄が教えてくれたサイダーの飲み方。缶のプルタブの中心の丸いプルタブを固定している部分、そこを釘と金槌で穴をあける。穴を指で塞いで思いっきり振って口に向かって指を離すとシャーっとサイダーが飛び出てくる。炭酸と飛び出した勢いで、普段刺激されない口の上のほうがくすぐったい感じもあって楽しかった。一瞬で終わってしまう花火のようだった。その後もたまに一人でやっていた。
お盆休みで、ふとそんなことを思い出した。あの飲み方でサイダーを飲みたくなった。
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